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第1回「特許のブラックボックス化は可能か?」

技術開発型メーカーを経営しています。

以前に、ある特許をとりましたが、他に他社がその技術の周辺特許を一斉に取り、逆に当社が身動きができなくなり、泣き寝入りするはめになりました。

そこで、核になる技術は特許を取らないという方法を採ることにしました。

リバースエンジニアリングされても、当方の技術が分からないようにブラックボックス化するには、どのような方法があるでしょうか?

(東京都 メーカー 59歳)

 

自社特許の周辺特許を他社に抑えられ、困っているという状況は理解できます。しかしながら、貴社の対応策については、あまりよい方法とは、思えません。

そもそも、特許制度は、特許出願を通じて発明の内容を社会に公開した者に対して、その代償として、独占権を与え、これによって、発明を奨励し、産業の発達に寄与することを目的としています。要するに、技術者を競争させることによって、技術の進歩を促進させることが前提条件となっています。そのために、各企業ともしのぎを削っている訳です。

貴社の対応策として「核になる技術は特許を取らず、自社の技術をブラックボックス化する。」とのことですが、大きな問題があり、積極的な特許出願を行う方法と比べ、次善の策とも言えないと考えます。問題点は、次の2点です。

(A)通常、製品に具現化されている発明の完全な秘匿は、困難である。

(B)貴社の製品に関する技術について、他社が特許出願し、特許権が登録された場合には、特許権侵害を問われる可能性がある。

(1)特許網の構築が基本

 

上記問題点により、奇を衒わずに、地道な活動として、自社の核となる技術を中心として、特許網を構築し、他社の対抗出願の隙を与えないことをまず検討すべきです。

特許網の構築については、先月の本コーナーの回答の中で述べていますが、概略は、次の通りです。

1.従来の技術、製品と比べ、自社の製品の違うところ、優れていることを明確に把握する。

2.それらの違いについて、特許出願、実用新案登録出願、意匠出願について検討する。

3.自社の製品や技術の重要なポイントについて、代替技術の特許出願等を行う。開発の過程で採用しなかった技術、あるいはコストが掛かるため現状では選択肢とならない技術についても、出願する。

4.自社の商品を常に再評価し、使い勝手の向上、生産性の向上、使用者のコストを削減など、各機能部分、部品などについて、改良発明を継続する。

(2)技術をブラックボックス化できるか?

 

「技術をブラックボックス化できるか?」について、当然のことながら、製品の外観からわかる技術をブラックボックスにすることは、不可能です。また、製造方法や社内でのみ用いられる製造装置など、製品を分析しただけでは認識できない技術に関する発明については、ノウハウとして秘匿することは、通常、行われていることです。

製品の内部に特徴を有する発明について、貴殿のご質問にありました「リバースエンジニアリングされても秘匿できる」方法というのは、はっきり言って、無いと考えたほうが良いでしょう。

スパイ大作戦というテレビ番組で、所定の再生がされたカセットテープが自動的に消滅するという設定がありましたが、貴社製品を解体した場合に、自動的に発明の核となる部分が破壊されることは、技術的には可能性があるかもしれません。しかしながら、コストは膨らみ、製品自体も大きくなってしまうでしょう。また、全てレンタルとし、定期的に使用状態を確認するという営業形態によって、リバースエンジニアリングを防止することもできそうです。しかし、利用者にとっては、大変煩わしく、また、貴社にとっても管理コストが膨大となることが予想されます。

上記のいずれの方法によっても、結局、商品価値が低下し、貴社の利益に貢献できません。プログラムの発明については、ROMを解析するためには、多大な費用が必要となるため、他社が安易に実施することはないと考えますが、これも不可能なことでは無いので、完全なブラックボックス化は困難です。

(3)発明の秘匿

 

貴社がブラックボックス化を意図して、発明を秘匿した場合であっても、新たな問題が発生します。貴社の秘匿した技術に関する発明について、他者が特許出願し、特許権が登録された場合には、特許権侵害を問われる可能性が出てくるということです。貴社が秘匿することによって、貴社が製品を販売した後に、他者がその製品に用いている発明を特許出願したとしても、新規な発明として取り扱われますので、特許権が登録されてしまいます。

貴社がブラックボックス化を意図して販売したとしても、何らかの方法で解析されてしまう場合や、解析されなくても侵害の可能性が立証されれば、裁判において自社の実施態様を明示しなければなりません。訴訟に備え秘匿した技術について、先使用による通常実施権を確保する必要がでてきます。

しかしながら、先使用権を立証できる準備を行っていたとしても、依然として次の問題は解決しません。

(4)先使用権の確保

 

上記の通り、先使用権によっても権利行使される可能性を完全に避けることはできませんが、ご参考までに先使用権の確保について、概説します。

先使用権とは、他者の特許出願時には、少なくとも、発明の実施である「事業の準備」、もしくは、その「事業」をしていた者については、通常実施権を有する者として、その「事業」を継続できる権利です。詳細には、特許庁ホームページに「先使用権制度ガイドライン(事例集)」を参照願います。

先使用権を活用する際の主要な問題点

①「他者の出願の際、事業の準備をしていることを如何に立証するか?」

研究ノート、技術成果報告書、設計図、仕様書、事業計画書、設備の見積書、事業開発決定書等について、確定日付や事実実験公正証書などの公証制度を利用して、事実の明確化、文書の証拠力の確保を図る必要があります。

②「実施形態を変更した場合に、先使用権を有すると言えるか?」

先使用権の効力は、他者の特許出願の際、先使用権者が実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した形式にも及ぶとする判例があります。「同一性を失わない範囲内」については、ケース・バイ・ケースであり、実際には、バージョンアップや、新機種の販売などに際し、注意する必要があります。

③「外国での事業の準備では、先使用権は認められない」

日本国内において、他者の特許出願の際、少なくとも事業の準備している場合であっても、多くの場合、外国において先使用権を主張することができません。

(5)まとめ

 

上記の通り、ブラックボックス化は多くの問題を抱えています。従って、奇を衒わず、特許網の構築に努力すべきです。また、そうすることで、貴社の技術力を向上させることとなると確信します。

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