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第10回「拡大する市場に向けた技術を開発しようと考えています」

将来的に拡大する市場に向けた技術を開発しようと考えています。

開発に成功すれば市場のシェアを大きく取れるという目論見を持っていますが、その技術にはまだ国際規格が無く、社内では開発を加速させるべきか、それともある程度、規格が定まるまで様子を見るべきと意見が分かれております。

このような場合は、どうすれば良いでしょうか?

 

■はじめに

 

本稿はエレクトロニクスメーカーで技術開発と新製品開発を担当した筆者の経験に基づいたものですので、固有技術中心のハードウェア(それもアナログ型を念頭に置いた)開発及び製品化を前提としており、ともするとバランスを欠いた内容になりかねないのを敢えて承知の上で、書き進めようとしています。その点を予めご理解いただきたいと存じます。 ちなみに、パソコンに代表されるようなモジュール化された水平統合型のハードウェアやソフトウェアの場合はオープン化と規格化という流れを活用し、後発でも効果的な導入戦略の採用により十分キャッチアップできる可能性がありますが、本稿では取り上げませんので、ご承知置きください。

それはさておき、本論に入りましょう。

100年に1度といわれる大激変の経済環境にあっては、過去の成功体験は逆に企業の進路を誤らせかねない可能性もありますので、慎重にならざるをえないことでしょう。

この場合の「過去の成功体験」というのは、そのほとんどがかつて、日本経済が華やかなりし頃、「イケイケ、ドンドン」の風潮に乗って成功がおぼつかない野心的な開発目標に向かって猪突猛進した時代の「アニマルスピリット」によりもたらされたものでもあります。

そのような時代でしたら、本件のようなご質問に対しては、「あれこれ迷うようなら、お止めなさい」と一言いえば済んだのですが、そうも言っていられない世の中になってしまいました。

■技術開発と製品化に関するあるべき姿について考えて見ましょう

 

結論を最初に述べさせてもらいますと、規格化といってもその内容が中核デバイスの基本構造や動作原理を左右する場合は極めて稀で、出力部分や操作部分のようなインターフェースの仕様を定める場合が多いため、それを待って開発を加速しても手遅れになるのを座して待つ「負け犬戦略」となる場合がほとんどです。

加えて将来性のある大きな事業化案件は、製品の標準化を見定めてから着手すると、期間的にも物量的にも集中的に経営資源を投入しなければならず、企業経営上大きなひずみをもたらすため、業績への大きな下ぶれリスクを伴います。

従いまして、よほどの開発指向的気質をもったベンチャー企業でない限りは、無理のない規模での「健全な赤字」としての先行投資という範囲内で、予め計画された開発及び製品化のプロセスを経て着実に進めるのが王道です。そして、各プロセスに設けられた継続か中止かの判断基準に基づき、トップマネージメントの判断を仰ぎつつ、進めていくことが望ましいあるべき姿です。

こうした点に鑑み、後述の条件に照らしてさしたる問題がなければ、初期のアウトプット(事業化に必要な知的財産権の権利化や製造ノウハウの取得など)を達成するまでは本件の開発を加速し、その後は規模を大幅に縮小しても着実に事業化に向けたフィージビリティスタディ(実現可能性調査)や量産のための準備を継続することをお薦めします。競争相手の多い業界になればなるほど、参入の初動段階での出遅れは決定的な「機会損失」をもたらし、その後それを挽回することは至難の業だからです。

■継続のための条件とは?

 

(1)トップマネージメント層の理解が得られていること

御社の経営トップ陣のなかに革新的な技術や製品に関して、「目利き」ができる人物はおられますか。そして、その人物が目下お悩みの技術開発案件がスジがよく、御社の将来にとって重要なものだという認識をもたれていますでしょうか。それはいわば目に見えない「お墨付き」のようなものかもしれませんが、そうしたお墨付きがある限り、社内のパワーゲームにあまり煩わされることなく、新しいチャレンジにまい進できるからです。

新しい事業化案件はその可否を巡ってトップマネージメントの間で論争を招き、「社内権力闘争」の火種になることが多く、往々にして「政争」に翻弄(ほんろう)される場合がありますが、それは避けるに越したことはありません。

(2)中核となる推進メンバーがいること

上述のように、いかに経営トップの信認を得ていても、推進役である肝心の中核メンバーがいない場合、成功はおぼつかないものになってしまいます。石にかじりついてもプロジェクトを完遂したいという強い意志と使命感を抱いた「志」を共有する少数精鋭の中核メンバーがいることが絶対条件です。

以上のふたつは革新的な事業化案件を継続する上では、不可欠の条件ですが、成功に導くためにはこの(2)は外せません。

もし、(2)に関して、思い当たるメンバーがいない場合は、適任者が見つかるまではいったん停止したほうがいいでしょう。

以下は必ずしも必要な条件ではありませんが、有ると無いとでは事業化プロセスで不必要な摩擦を起こし、余分なことに時間を費やすなど、「生産性」に著しい違いをもたらしますので、列記しておきます。

(3)投資回収に関しても説明できる根拠があること

経営状況が悪化し、財務的に問題が発生した場合、不要不急の先行投資はまず削減対象になります。そうした場合に備えて、いつでも中長期的な見地から投資回収のメド立っていることを示す根拠として、本件に伴う投資回収の見通しを示す資料を準備しておくことをお薦めします。

(4)関連業界及び他社の動向を把握できる情報収集&分析能力を保持していること

時々刻々変化する事業環境に対して、タイミングよく的確な状況判断を行い、軌道修正をしていくためには、現在置かれている状況を客観的に把握できるような「情報力」が必要です。案件が重要になればなるほど、ことあるごとに経営トップからも的確な報告を求められますので、これに答えるためにも「情報収集と分析」はなおざりにはできません。

(5)技術開発の成果をタイミングよく可視化し、権利化できる知財(知的財産)関連の社内インフラが整っていること

事業化の過程で得られる「成果物」を迅速に権利化する体制を整えておくことは、経営トップの重要な仕事です。心地よい口先だけの「成果報告」にごまかされず、冷徹に結果を評価し、時には一見問題なく進んでいるかのように見える案件に「中止」の断を下せるのは経営トップを置いて他にありません。それもこうした体制があればこそできることです。

■終わりに

 

新しいことに着手する場合、社内では必ず相反する意見が交わされ、すんなりとコンセンサスを取り付けることはまずありません。

大切なのは事業化の過程の節目節目で成果物(知財関連の報告書や試作品など)を確認しつつ、継続の可否を判断できる材料をタイミングよく上層部に提示しながら、理解を得ていくことです。御社の現状はそうした「説得工作」が不十分なために起きているように推察いたします。

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