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第2回 「基礎が出来ていない学生が多数いて困っています」

エンジニア志望の学生を毎年,採用しています。しかし,以前と比較して基礎が出来ていない学生が多数いて困っています。

こういう場合に,社内教育を施すにしても時間が掛かりすぎます。良い採用方法もしくは,教育方法などあればお知恵を拝借できないでしょうか?

(東京都 メーカー 48歳)

 

質問者の指摘される学生とは主として技術系大学や大学院、高専などを指していると思われますが、現在彼らにとって、就職戦線はここ数年の売り手市場から一挙に「超氷河期」に突入してしまい、混乱や当惑は相当に深刻なものがあります。

また企業側としても選りすぐった若者を即戦力となる人材に育てなければ会社の存亡に関わる訳ですから、優秀な人材の見分け方、及び採用後の教育が極めて重要になります。

さて今の学生は基礎が出来ていないということですが、先ず注意して頂きたいことは、つい昔の自分と比べて見てしまうことです。

誰しも過去の記憶は美化されるもので実は案外同じ程度であったり致します。ただこれを除外した上でやはり基礎力が落ちているとすれば、これは少し原因を追求する必要があるでしょう。教育現場の観点から申し上げられることは幾つかあります。

■ 基礎学力低下の背景 ~教育現場の観点から~

 

先ず日本の社会が豊かになり、大学への進学率が著しく伸びました。少子化による逆ピラミッド型の人口構造では、最先端の技術力を若い世代に継承しなければ日本の将来は無いのですから、これ自体は自然なことなのですが、小中高の教育が質的に高度になった訳ではないので、積分を全く知らない学生や、そもそも高校の数学や物理を履修したことのない学生まで理工系に許容されるようになりました。

これでは大学の授業は成り立ちませんので、入学後に改めて高校数学や物理を履修させたり,一部専門科目が大学院へ先送りとなります。大学は「教養」を身に付けるため、大学院で(やっと)技術者としての基礎が身につくという具合に、最近の大学案内が変わって来たのをお気付きでしょうか。

また授業スタイルの変化による影響もあります。広範囲になった講義分野で効率よく授業を進めるため、インターネットやコンピュータを積極的に取り入れるようになりました。学生も視覚的に楽しめますので歓迎致します。いわゆる「百聞は一見にしかず」ですから、理解が早まりどんどん先に進んで行くような期待が当初あった訳です。ところが現実はそうは旨く行かないのです。プロジェクタ中心の解説と完備したテキストやプリント類の配布やビデオで、学生は殆どノートを取らなくなり、本人は良く理解できたと感想を述べるのですが、いざ試験やレポートとなると惨憺たる結果となるのです。

解答用紙には断片的な単語だけの学生もいます。また多くの学生は図が書けません。視覚としての印象や抽象概念だけが頭に残っているのです。さすがに優秀な学生を見ると、やはり文章や図をきちんと書けますし、解答には単位も記入されています。具体的な説明が出来ます。彼はノートを取れるのです。

■ 見直したい「手を使うこと」と「経験すること」の効用

 

しかし残念ながら、前述したような優秀な学生は圧倒的少数です。もっともこれは会社でも同じ事で、議事録が旨く取れなかったり、メモや筆記用具を全く用意しないで会議に参加する新人(ベテランも含めて)社員の方が多くありませんか。手を使って書くことは文章であろうと図面であろうと、日常の挨拶や電話の応対と同様に大事な脳の訓練で、後々仕事の確実性に大きく影響いたします。例えばプレゼンで図面をフリーハンドで書きながら説明させる。その場で直ちに質問をして答えさせる訓練などは非常に有効ではないでしょうか。今後の社内教育や採用試験の一つの方法であると思います。

最後には物作り体験の不足が深刻です。子供の時から身近には工場や畑もなく,どのように物が作られるか実際分りません。実験や物作り・試作は技術の基礎を強化する最も良い手段なのです。基礎理論というのは機械工学にせよ電気にせよ究極は単純な方程式・数式や概念で表現されるだけなのですから、基礎が出来ているということはその応用や組合せを色々計算して試してみたり、試作や経験を繰り返すことによって分類整理されているということなのです。経験無しでは基礎は築けません。

■「モノづくり」の楽しさと「基礎知識」を共有すること

 

最近大学・高専でもロボコンやそれに似た製作授業が多く取り入れられており、学生に人気を博しております。産業界から見るとレベルも高くないのですが、彼らは自ら設計製作に取り組み徹夜も厭いません。これは勿論順位を競うというインセンティブはあるのでしょうが、自分で考えて設計したものが実際に「物」として存在し、しかも思い通りに動かすことが出来る(或いは動かない!)というエンジニア原点の楽しみを感じたからではないでしょうか。ここから基礎が始まるのです。 新入社員の教育においてもOJTの一環として、自ら設計、製作、組立を経験させることが非常に有効で、社員同士のコミュニケーションや業務に必要な基礎学力・知識を自覚させ、モラールを短期間に高める手助けになるのではないでしょうか。

採用後の研修、特に技術的基礎教育は勿論大事ですが、単に学校でやった基礎科目を再講義するのでは大きな効果も無く、新人もやる気が出ないと思われます。むしろ自覚を促して自発的に再挑戦させることの方が重要で、それには職場の努力が必要です。例えば新人のみを対象とせず、中堅の技術者を主体として、社内技術講座のようなものを開いてテキストを作り、自社製品の設計に含まれる基礎知識を新人も含め皆で共有することで帰属意識を高め、復習も同時に進めることが出来ます。私も過去にこのような事をやったことがありますが、社外秘の最新技術を新人も含めて議論するのは非常に楽しく充実した時間でした。案外経験者の中にもある種の基礎知識が好い加減であることに気が付くことが多く、難しい技術書を読むだけとは比べ物にならない収穫がありました。講師となった中堅技術者は素人に近い新人にも、驚くほど易しい数式と言葉で固有技術の基本を理解させてくれましたから、むしろ教育側の力量が問われると思います。

筆記試験でも面接でも同じ事ですが、これがベストという方法は有りません。むしろ、採用された新人が優秀な戦力になり得るかどうかは、会社或いは職場と本人との相性及びお互いの熱意努力ではないかと思うのです。あるメーカーでは採用試験に紙飛行機を受験者達に設計?製作させて最後に飛ばして競わせたそうです。非常に興味深いユニークな方法ですが、一番私が興味を持ったのは、それでは採用の基準は何であるかという事です。果たして飛行時間の一番長い飛行機を飛ばした者でしょうか。それとも何か別の評価でしょうか。皆さんも考えられては如何でしょうか。

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