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第8回「弊社の技術について取引を申し込まれています」

国際的な外資系企業から弊社の技術について取引を申し込まれています。一度技術を渡すと、その技術の周辺特許を複数取って身動きが取れなくすることでも有名な企業です。

技術を渡さず弊社で加工したものを渡すことを提案しましたが、拒否されました。

このような場合、どうすれば技術を守りつつ取引をすることができるでしょうか?

(神奈川県 メーカー 43歳)

 

ご質問の「取引の申し込み」について、譲渡、ライセンス等が考えられますが、自社の「技術を守りつつ取引をする」ことを希望されていますので、貴社の特許権を始めとする知的財産権やノウハウ等を相手先企業へライセンスする場合と理解しました。強力な開発力と販売力を有する企業へ技術供与する場合、自社実施では得られない莫大な利益を得ることができ、大変魅力的です。その一方で、相手先企業が強大な資金力と技術力を利用して、多数の改良発明の特許権を取得した場合、庇(ひさし)を貸して母屋を取られるはめになってしまって、元も子もありません。

以下に、この様な場合に、考えられる知的財産権の活用方法、契約による対処方法について説明します。

(1) 知的財産権の活用

 

相手先企業による供与技術の改良発明や周辺技術の特許権取得を防ぐために、まず供与技術および周辺技術の特許、実案、意匠などの自社の知的財産権を充実させます。具体的には、①自社の製品や技術の重要なポイントについて、代替技術の特許出願等を行う、② 開発の過程で採用しなかった技術、あるいはコストが掛かるため現状では選択肢とならない技術についても、出願するなどです。

相手先企業の権利取得を防ぐこと目的とするならば、考えられる改良技術、代替技術を明細書に記載しておくことにより、特許法第29条の2の先願の地位を確保することができます。これにより、相手先企業は、同様の内容について権利を得ることができなくなります。勿論、それらの技術について、できるだけ広い範囲で権利が取れるようにします。弁理士に相談すると良いでしょう。かなり膨大な明細書でも日本出願だけであれば100万円程度で質の高い出願をする特許事務所がたくさんあると思います。

よる確定日付の取得、事実実験公正証書の作成などを行い、自社ノウハウを明確にしておくことにより、後にのべる契約による対処方法の効果を高めることができます。

ノウハウについて、発明者ノート、技術報告書、会議体資料・議事録、実験プラント設計図・運転マニュアル、フローチャート、基本設計、詳細設計、装置の製作図面・使用方法、生産設備の設計図・運転マニュアル、品質管理マニュアル、組成表、分析・測定方法、試作品、雛形、使用工具、部品などを、文書、ビデオなどとし、秘密として管理します。また、事実実験公正証書は、実験プラントや生産プラントを公証人立会いのもとに実際に運転し、ビデオ撮影と組み合わせて、公証人に作成してもらいます。実際の作成に当たっては、貴社事業所の所在する都道府県の公証人役場に相談すると良いでしょう。

ノウハウに関する確定日付書類や、事実実験公正証書を適切に作成しておくことにより、貴社は、先使用による通常実施権を有することを主張できますので、もしも相手先企業が貴社との契約の対象とならない改良発明を権利化した場合であっても、先使用権が認められば、現在所有している範囲においては、貴社の事業活動は制限されないことになります。

(2)契約による対処方法

 

言うまでもなく、技術供与に際してできるだけ有利な契約を結ぶことです。特に特許、ノウハウのライセンスに関する契約において、その対象を明確にします。特許、実案、意匠、商標などについては、出願番号、登録番号とその公報記載の内容を容易に特定することができますが、ノウハウについてはその特定が不明瞭となる場合が多いですので、前記のように技術項目毎に、文書化、ビデオ化をしておくと、契約の際、先方の必要とするものだけに限定して、契約の対象を絞ることができます。必要以上のノウハウを供与することを防止できますし、契約条件を有利(ライセンス費用の増加など)にする材料となります。すなわち全てをライセンスしてしまうより、このように対象を絞ることにより貴社に対抗できる武器を残しておくことを考えることも必要です。

さらに最も重要なことは、現在所有しているものだけでなく、将来の改良技術、改良発明の取り扱いです。ライセンシーの成した改良技術の取扱いについて、アサイン・バック(譲渡義務)、フィード・バック(報告義務)、グラント・バック(実施許諾義務)などを取り決める場合がありますが、「不当な取引制限」「双務的」「バランス」などの観点から不公正な取引とされる虞(おそれ)があるので注意が必要です。前2者は不公正であるとされる場合が多いようですので、弁護士とよく相談する必要があります。

今回の場合、自社でも開発を継続するようですが、相手先企業の改良開発、改良発明の権利化が脅威となっていますので、双務的なグラント・バックとすることで、自社での実施可能性を確保することができます。自社の開発した改良技術も相手先が実施できることとなりますが、相手先のスケールメリットを活用して自社の利益を継続して得ることができるでしょう。

また、「何が改良技術か?」「契約締結後に成した開発技術が、契約の対象となるか否か?」について、問題となる場合が多くありますので、前記のノウハウの明確化がここでも重要となります。ノウハウが明確になっていると、相手先企業の改良発明として特許出願しようとしている、または特許出願した技術が、実は供与技術そのものであることを示すことができます。

さらに、グラント・バックの対象となる技術の範囲を、契約で明確化しておく必要があります。例えば、貴社の供与技術がデジタルカメラの技術であった場合に、デジタルビデオカメラを対象とした改良技術が契約の対象となるのか否かなど、契約書の作成にあたっては十分考慮します。契約後の貴社の開発活動の成果も、双務的なグラント・バックの対象となりますので、契約の対象となる技術範囲の特定は、慎重に検討すべき項目です。

特許、ノウハウのライセンス契約だけでなく、貴社で相手先が望む量と質の製品が供給できるのであれば、供給契約を結び独占的に当該技術に関する商品を供給することによって、貴社の十分な利益を確保する道を作ることができます。ご質問では、貴社にて「加工したものを渡すことを提案したが拒否された」とありますので、難しいかもしれませんが、供与技術の一部であっても、貴社技術者の経験とスキルにより、他社に比べ非常に高い質の製品や部品を提供できることを示すことができれば、貴社から商品供給を受けることが相手先にとっても利益となりますので、供与契約の可能性が出てきます。

いずれにしても貴社が望む条件を明確にして弁護士等に相談し、望ましい契約書を作成してもらうことを検討したほうがよいでしょう。また、相手先企業との交渉も、貴社が自ら行うより弁護士に任せて有利に進めることも検討すべき事項です。

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